■判決
■前記
■とおり
とおり, 都市計画法66条が,同法の事業認可の告示があったときは,施行者 が,事業の概要について事業地及びその付近地の住民に説明し,意見 を聴取する等の措置を講ずることにより,事業の施行についてこれら の者の協力が得られるように努めなければならないと規定しているこ とを,都市計画事業の認可に関する同法の規定が良好な生活環境を保 全すること等もその趣旨及び目的としていることの根拠の一つとし た。
他方,土地収用法28条の2は,「起業者は,第二十六条第一項 の規定による事業の認定の告示があったときは,直ちに,国土交通省 令で定めるところにより,土地所有者及び関係人が受けることができ る補償その他国土交通省令で定める事項について,土地所有者及び関 係人に周知させるため必要な措置を講じなければならない。」と定め ているにすぎず,そもそも周辺住民はその対象とされていない。
この 点でも,土地収用法が周辺住民の個別具体的利益を保護する趣旨を含 むものでないことは明らかである。
(エ) P3判決は,都市計画法上,都市計画の案を作成しようとする場合 において必要があると認められるときは,公聴会の開催等,住民の意 見を反映させるために必要な措置を講ずるものとし(同法16条1 項),都市計画を決定しようとする旨の公告があったときは,関係市 町村の住民及び利害関係人は,縦覧に供された都市計画の案について 意見書を提出することができるものとしていること(同法17条1項, 2項)を判示している。
しかし,都市計画法上の手続と土地収用法上 の手続には,以下のような相違があることに照らせば,そのような手 続が設けられているという一事をもって,土地収用法について,起業 地の周辺住民の具体的利益を保護する趣旨を導くことはできない。
土 地収用法において,事業認定に係る手続規定は,多くの人々の意見を 参考とし,できる限り公正妥当な事業認定が行われるための公益目的 の規定であって,起業地の周辺住民及び自然保護団体の環境上の利益 を個別,具体的に保護する趣旨を含むものではない。
すなわち,旧土地収用法23条は,事業認定機関は,事業認定に関 する処分を行おうとする場合において必要があると認めるとき,公聴 会を開いて一般の意見を求めることができる旨規定するが,これは, 事業の実施により影響が広範囲に及ぶものなどについては,同法20 条の要件,特に同条3号の要件の認定をするに当たり,困難かつ微妙 な価値判断が必要になる場合があるために設けられた規定である。
公 聴会は,利益の比較衡量に必要な情報の収集を目的とするものであっ て,起業地の周辺住民等の個々の健康や生活環境に係る具体的な利益 を保護するものではない。
また,都市計画法17条2項は,関係市町 村の住民及び利害関係人は,都道府県知事又は市町村に対し,縦覧さ れた都市計画の案について意見書を提出することができる旨規定す る。
他方,旧土地収用法25条は,事業認定に関する処分を行おうと する場合においてその公告があったときは,事業の認定について利害 関係を有する者は,都道府県知事に意見書を提出することができる旨 規定する。
同条にいう「利害関係を有する者」とは,起業地周辺の住 民で,事業の恩恵に浴する者や事業により環境面での影響を受ける者 も含まれるものの,同条による意見の収集は,事業認定機関が事業認 定に関する処分をするに当たって,広く一般からの意見を求めること により,公正妥当な判断をするための資料を得ることを趣旨とするも のである。
したがって,この意見書提出も,利益の比較衡量に必要な 情報の収集を目的とするものであり,起業地の周辺住民等の個々の健 康や生活環境に係る具体的な利益を保護するためその意向を事業に反 映させるためのものではない。
イ処分の根拠となる法令と目的を共通にする関係法令の趣旨及び目的の 参酌について (ア) 控訴人らは,本件事業について,都市計画法上の都市計画決定がさ れていることから,土地収用法上の事業認定処分は,都市計画法上の 都市計画に適合しなければ違法である旨主張し,これを前提に,都市 計画法,公害対策基本法及び東京都環境影響評価条例を関係法令と位 置づけ,本件にもP3判決の判旨が妥当すると主張する。
(イ) しかし,土地収用法は,事業認定の対象となる事業の内容として同 法3条各号,事業認定要件として同法20条各号を定めるだけで,当 該事業が都市計画に一致しなければならないとの要件はなく,都市計 画法上の違法は事業認定の取消原因とはならない。
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土地収用法は都市 計画法と趣旨・目的を異にし,都市計画法の趣旨・目的を参酌するの は誤りである。
また,そうである以上は,公害対策基本法と土地収用 法との間にも何ら接点も関係もなく,これを関係法令として参酌する ことはできない。
(ウ) 本件圏央道事業区間について,平成元年3月13日に,都市計画法 11条の都市施設として,東京都知事により,同法に基づいて都市計 画決定がされ,同決定の際,東京都環境影響評価条例に基づく本件環 境影響評価が実施されている(乙19)。
しかしながら,控訴人らが 取消しを求めているのは,平成14年4月19日にされた土地収用法 に基づく本件事業認定であり,本件事業認定申請に先立って,東京都 環境影響評価条例に基づく環境影響評価の実施が義務付けられている ものではない。
起業者らは,平成13年11月20日の本件事業認定 申請に当たって,本件環境影響評価以降に得られた新たな知見に基づ き,本件事業の実施が環境に及ぼす影響について補足的に照査を行っ ているが,これは,東京都環境影響評価条例によって義務付けられた 事後調査等ではなく,その結果は参考資料として起業者らから提出さ れたものにすぎない。
東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価 は,都市計画法の都市計画決定に当たって行われるものであって,土 地収用法に基づく事業認定とは無関係であり,土地収用法との間には 何らの接点も関係もなく,同条例は,土地収用法と目的を共通にする 関係法令であるということはできない。
本件における原告適格は,処分の根拠法令である土地収用法や,その関 連法令の趣旨及び目的に照らして検討されるべきであるところ,土地収用 法に関しては,起業地の周辺住民等の個々の健康や生活環境に係る利益を 保護することを趣旨及び目的としているとは解されない。
まして自然環境 を悪化させないという利益を保護することを趣旨及び目的としていないこ とは当然である。
甲事件一審原告らのうち本件起業地内の不動産について 権利を有しない者には,本件事業認定の取消しを求める法律上の利益はな く,本件訴訟における原告適格は認められない。
また,甲事件一審原告らのうち権利能力なき社団である自然保護団体に すぎない者は,そもそも健康や生活環境に係る具体的利益を有するとはい えないから,この点からも,本件事業認定の取消しを求める法律上の利益 がないことは明らかである。
2 大気汚染の被害について
原判決は,本件事業による大気汚染は環境基準内のもので,過大視すべ きものとはいえないと判断している。
控訴人らの原判決への批判は以下の とおり理由がない。
なお,原判決は,「起業地における圏央道の開通によ り,相当な大気汚染が生じることが予想され,このような新たな環境への 負荷が生じることは,好ましくない」(原判決170ページ)とも述べて いるが,都区部通過交通の圏央道への迂回交通のうち,大型車の割合が約 6割と想定され,自動車による大気汚染の原因の大半が大型車であること を勘案すれば,大局的に見れば,圏央道は大気環境の改善に対しても大き な効果を有しているというべきである。
本件環境影響評価が複雑地形にプルーム・パフモデルを用いていること への批判について ア控訴人らは,本件環境影響評価を複雑地形にプルーム・パフモデルを 用いているものであるとして批判するが,これらの拡散モデルは,複雑 地形や地表に構造物等が存在する場合であっても,適正な予測をするこ とができる汎用性のあるものであり,本件環境影響評価における大気汚 染予測は適切である。
イ控訴人らは,原判決は甲121にある拡散幅の限界について答えてい ないとも主張するが,そもそも甲121は拡散幅の限界を示したもので はない。
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